ところが数日後、この小売商の夫婦は惨殺されて河に投げこまれているのが発見されたのである。
犯人があの赤毛布であることは明らかである。
が、物取りにしてはひとりひとり誘い出すなど、念が入りすぎている。
また子供まで誘い出して殺そうとしたことなどから考えるに、怨恨としても相当根の深いものだ。

本家の提灯を持っていた、ということからしてすぐに犯人は割れるものと思われたが、
結局何ヶ月たっても犯人の見当はつかず、迷宮入りになってしまった。

しかし男が終始顔を見せなかったこと、
子供だましの嘘でふらふらと夫婦ともども出ていってしまったこと、
子供だけは、まるで隣家の細君が護符でもあったかのように守ってみせたことなど、
まことに不気味な事件と言っていいだろう。