研究指針については、政府の生命倫理専門調査会が今年8月、中内教授の研究を踏まえ、動物の受精卵にヒトの細胞を入れて、子宮に戻す基礎研究を条件付きで容認。5日、指針改定に向けた議論が始まる。

 だが、中内教授は、規制によって研究が2年半停滞したと指摘し、「もしこの研究しかしていなかったら、とっくに海外に移っていただろう」と明かした。「今後指針が改定されるとしても実施までは何年もかかる。リスクをとらないという日本特有の体制では、新しいことはやりにくい」と語った。中内教授によると、数年前から、スタンフォード大や英ケンブリッジ大など海外の複数の大学から移籍の誘いが来ていた。

 スタンフォード大には教授として赴任し、カリフォルニア再生医療機構から6年で約6億円の研究費が支給される。東大の定年までは日本でも研究するが、3年半後は完全に米国に拠点を移す。中内教授は「(移植可能な臓器を作るという)医学上の利益が目的。日本での研究の遅れの責任は誰が取るのか」と話した。

 中内教授チームが計画している実験は、特定の臓器が欠けるよう操作したブタの受精卵(胚)に、ヒトのiPS細胞を移植して「動物性集合胚」を作り、ブタの子宮に着床させる。欠けた臓器の場所にヒトの細胞からできた臓器を持つブタが生まれれば、その臓器を将来、移植医療や新薬の開発に応用できる可能性がある。

http://mainichi.jp/select/news/20130905k0000m040161000c.html