『旧約聖書』には、古代の四大文明でもっとも古いとされるメソポタミア文明に含まれるシュメール文明やバビロニア、アッシリア等、現在のシリアやイラクあたりの多神教文化から取り入れた要素が数多く見られます。例えば「ノアの方舟」の元になった洪水物語がシュメール王を主人公とした『ギルガメシュ叙事詩』にあったり、神が天地創造の5日目に造った竜の怪物レヴィアタンはメソポタミア一帯で広く信仰されていた雷神バアルの退治する竜リタンが元になっていることなどが挙げられますが、バアルは聖書の中で邪教の崇める対象に貶められておりその地域での宗教的対立関係が反映されていると思われるところも興味深い要素です。
信仰対象を唯一神に一本化したら、ほかの神格は吸収するか悪魔とみなして対立することになるのですから、「一神教と多神教」の対立構造というものは「天使と悪魔」の対立よりもよほど根深いものということが理解できます。