(ブルームバーグ):独ジャーマンウイングス9525便の操縦室に独り残ったアンドレアス・ルビッツ副操縦士(27)は、致命的となりかねない秘密を隠していた。

同機がフランスのアルプス山中に墜落した当日、ルビッツ副操縦士は「勤務に適さない」とする医師の診断を無視し、乗客・乗員150人全員死亡という同社と親会社のルフトハンザ航空にとって最悪の航空事故につながった一連の出来事を引き起こした疑いが持たれている。

厳しい医療プライバシーの法律によって、航空機を急降下させたルビッツ副操縦士の心に潜んだ危険の可能性に企業は気付いていなかったようだ。医療情報を保護し、患者が安心して医師に相談できるようにするために作成された守秘義務のルールでは、当局や企業に危険をもたらしかねない診断結果を開示する責任は患者にある。

今回の悲劇の結果、そうした守秘義務のルールがどのように変わり得るか、また医療記録が特定の場合に企業と共有されるべきかどうかをめぐり議論が高まりつつある。それと同時にルビッツ副操縦士が一定期間にわたり飛行訓練を中断していたことについても疑問が浮上している。パイロット資格取得が遅れる原因となった中断の理由はルフトハンザに開示されていない。

ヘイズタックス・テクノロジー(ロサンゼルス)のブライアン・ウェア最高技術責任者(CTO)は、「企業が医療記録といった個人情報をより簡単に入手できるようにすることに関する政治的議論はもろ刃の剣だ」と語る。「昇進を決める場合などに医療記録が調べられることを従業員が知ったり、そう考えたりすれば、専門家の助けを求めにくくなる」ためだと説明している。