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◆(エリザベスの改宗の発言に)メアリーは感動し、有頂天になった。だが、炯眼なスペイン大使の方は、ずるくて容易に打ち解けぬこの王女を見抜いていたので、疑惑の眼でこれを見たのであった


◆『私がこの結婚を切り出した時』とルナールは書いている、『彼女は一再ならず笑ったが、わたしを見つめた彼女の眼は、それが彼女にとってひどく嬉しかったことを示していた』そして、その会談の際に、『彼女は誓って言った、-自分は世間で恋と呼んでいるものの誘いを嘗て感じたこともなければ、肉欲の思いに耽ったこともなかったし、また、神の思召しによって王冠を戴くまでは結婚など考えたこともなかったそして、今後自分が結婚することになるとしても、それは国家に対する顧慮から、敢て自分自身の愛情に反してなされることにするだろう、と』だが、彼女は、『カール五世を本当の父とも思って、自分は万事彼の言うとおりにする』という希望を確と伝えるよう大使に請うた


◆(アンについて)二番目の結婚を切断するには斧で十分であった。可哀想なアン・ボレーンは二つの失策を犯した。すなわち期待されていた嗣子の代わりに彼女は女子エリザベスを生み、次に生まれた男児は死産であった。しかも彼女は王を欺いたのであった。その理由は、恐らく、王には健康な子供を上げる見込みがなさそうに思われたので、それで彼女は王を失望させまいとしたのであろう。こうした罪の為に、彼女のかわいい首は、死刑執行人の刃の下に断たれたのだ


◆メアリー・チュードルは、一個の女の魂の中で、愛と、狂信と、全能とがたまたま一緒になったことから生ずる紊乱の、一つの哀れな実例である


◆新教徒に対する彼女の迫害の残忍さも、確かに一部分は狂気に近い精神錯乱から説明されえる。フィリップとて彼女にこのような苛酷さを勧めはしなかった。異教徒を焚殺するのは、スペインやネーデルランドでは結構だが、イギリスでは慎重にやるため若干の忍耐が必要だ、というのが彼の考え方だった。メアリーは忍耐などしなかった