結婚と何が違うの? 法律的に「内縁の妻」が認められる条件とは……
【相談者:30代女性】
私には、学生時代から付き合って12年経つ彼氏がいます。結婚の話も特になく……。別れて新しい出会いを探すより、このままの家族のような関係をキープしたほうが楽と感じています。たまに、テレビのバラエティー番組などで、「内縁の妻」という表現をききますが、内縁の妻ってなんでしょうか? 私のように長く交際をしている人のことでしょうか? 教えてください。
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ご相談ありがとうございます。アディーレ法律事務所弁護士の篠田恵里香です。
「内縁」とは、「夫婦同様の共同生活を送りつつも婚姻届を提出していない事実上の夫婦」をいいます。「事実婚」なんていう呼び方もしますね。
「内縁」は、婚姻届を出しているかどうかに違いがあるだけで、実質は夫婦同様です。なので、法律上も、「内縁関係」が認められれば、夫婦と同じような扱いをすることになります。
例えば、内縁が破棄された場合には、「離婚」の場合と同様に、慰謝料請求や財産分与が認められたり、年金分割が認められることもあります。
ただし、いくら内縁関係にあっても身分や戸籍が関わってくる、「相続権」などはさすがに発生しません。
このように、「内縁」が認められると、法律上の扱いが変わってきます。長期間交際した挙句に別れた男女の間では、「内縁が成立しているか」を巡って裁判で泥沼争いになることも少なくありません。
●「内縁」が成立するためには
「内縁」が成立するためには、
(1)内縁意思(夫婦同様に暮らしていく意思)
(2)夫婦共同生活の存在
が必要です。この判断は、
(1)同棲の期間
(2)家計の一体性(同じサイフであったか)
(3)家事の分担
(4)双方親族との交友関係(結婚式・法要の出席等)など
様々な事情を総合考慮して、行われることになります。
夫婦共同生活の存在が認められるためには、少なくとも、同棲と同視しうる関係にあったことが必要です。
どんなに長く交際をしていても、別居を続けている二人では内縁の成立を認めてもらうのは困難でしょう。
内縁関係を証明する証拠としては、賃貸借契約書(同居人として名前がある)・住民票(住所が一緒)・通帳(ふたり分の収支が同一通帳に表れている)・家具購入明細(二人用の家具である)・妊娠の医療記録(事実上の夫婦となる意思があると推測できる)等や、親族・友人・同僚の証言等が、有力な証拠になります。
また、お互いの親族の冠婚葬祭に出席している事実も、内縁関係を強く推測させます。
今回のように12年間も交際している場合、同棲同様の関係が存在しているのであれば、「内縁」の成立が認められる可能性が高いと思われます。今後、同棲を開始すれば、内縁関係と認められる可能性が高くなるでしょう。
そして、一方が合理的理由なく、「内縁を破棄」した場合には、慰謝料請求ができることになります。
また、どちらが悪いかに関係なく、財産分与や年金分割を請求できる権利も出てくるということになります。
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今の関係も居心地がいいとは思いますが、相談者さんが、「幸せ」と感じられることを優先して、今後の彼との関係を考えてみてはいかがでしょうか?
●ライター/篠田恵里香(弁護士)