885 :本当にあった怖い名無し:2008/06/22(日) 22:16:06 ID:YqcAHiai0
今日はエイプリルフールだ。
特にすることもなかった僕らは、いつものように僕の部屋に集まると、適当にビールを飲み始めた。
今日はエイプリルフールだったので、退屈な僕らはひとつのゲームを思い付いた。
嘘をつきながら喋る。そしてそれを皆で聞いて酒の肴にする。
くだらないゲームだ。
だけど、そのくだらなさが良かった。

トップバッターは僕で、「この夏ナンパした女が妊娠して、実は今、一児の父なんだ」という話をした。
初めて知ったのだが、嘘をついてみろ、と言われた場合、人は100%の嘘をつくことはできない。
僕の場合、夏にナンパはしてないけど、当時の彼女は妊娠したし、
一児の父ではないけれど、背中に水子は背負っている。
どいつがどんな嘘をついているかは、なかなか見抜けない。見抜けないからこそ楽しい。

そうやって順繰りに嘘は進み、最後の奴にバトンが回った。
そいつはちびりとビールを舐めると、申し訳なさそうにこう言った。
「俺はみんなみたいに器用に嘘はつけないから、ひとつ作り話をするよ」
「なんだよそれ。趣旨と違うじゃねえか」
「まあいいから聞けよ。退屈はさせないからさ」
そう言って姿勢を正した彼は、では、と呟いて話を始めた。

僕は朝起きて気付くと、何もない白い部屋にいた。
どうしてそこにいるのか、どうやってそこまで来たのかは全く覚えていない。
ただ、目を覚ましてみたら僕はそこにいた。
しばらく呆然としながら、状況を把握できないままでいたんだけど、急に天井のあたりから声が響いた。


886 :本当にあった怖い名無し:2008/06/22(日) 22:16:32 ID:YqcAHiai0
古いスピーカーだったんだろうね、ノイズがかった変な声だった。
声はこう言った。

『これから進む道は、人生の道であり、人間の業を歩む道。
 選択と苦悶と決断のみを与える。
 歩く道は多くしてひとつ、決して矛盾を歩むことなく』

で、そこで初めて気付いたんだけど、僕の背中の側にはドアがあったんだ。
横に赤いべったりした文字で、『進め』って書いてあった。

『3つ与えます。
 ひとつ。右手のテレビを壊すこと。
 ふたつ。左手の人を殺すこと。
 みっつ。あなたが死ぬこと。

 ひとつめを選べば、出口に近付きます。
 あなたと左手の人は開放され、その代わり彼らは死にます。
 ふたつめを選べば、出口に近付きます。
 その代わり左手の人の道は終わりです。
 みっつめを選べば、左手の人は開放され、おめでとう、
 あなたの道は終わりです』