アベノミクス相場で久々にオイシイ思いをしたという人は、せっかくだから税金面でもオイシイ思いを享受すべきだ。年内にいったん売っておけば、税負担が来年以降の半額で済む(後述のケース2)。数十万円のリターンにつき数万円の違いが生じることになるので、面倒でもいったん節税売りに踏み切るのが得策だろう。

含み益が多い人ほど年内の売却が有利に!

 そして、そういったケース以上に油断大敵なのは、ケース1に該当する人たちだ。かなり昔に取得された銘柄の中には、膨大な含み益が発生しているものが少なくない。「いくらで入手した株なのか不明」という人はさらに要注意。税制上、取得価格がわからない場合はかなりのリターンが発生しているものとみなされてしまうので、それだけ税負担も重くのし掛かってくる。

 また、ケース3のように株式投資で発生している含み益自体はさほど大きくなくても、売り方を工夫すれば税金をゼロにすることも可能だ。消費税をはじめとする他の税金が増えているご時世だけに、大きな節税効果が得られるチャンスは絶対に見逃さないようにしたい。

節税売りをしないほうが無難なケースもある!

 ただし、その一方で節税売りの必要がない人も存在する。いや、むしろ売らないほうが有利に働くケースもあるので注意したいところだ。具体的には、下記の3つのいずれかに該当するケースだ。

(1)「利益×10%」が往復の売買手数料以下となる人 (2)「源泉ありの特定口座」を使っている人で、追加資金の余力がない人 (3)株式で得られる利益が確定申告している譲渡益の枠内に収まる人

 まず、(1)については補足説明が不要だろう。(2)は、再び買い戻すことが不可能になることがその理由だ。したがって、買い戻しに固執していない人や、かなり安くなるのを待ってから買い戻すつもりの人なら、売却に踏み切るのもアリだ。残る(3)については、他の譲渡所得で発生しているマイナスと損益通算して税負担がゼロになるなら、わざわざ売り急ぐ必要はないということだ。

【ケース1】 相続した株を保有している人

◎数百万円もトク! 取得価格が不明なら迷わず年内に売却を!

 親が長く保有し続けた株券を相続した人は、直ちに取引明細などを確認し、不明点は遠慮なく取引先の証券会社に問い合わせたほうがいい。パート3のランキング表でも紹介しているとおり、長い間に含み益がとてつもなく膨らんでいる銘柄が少なくないのだ。今年中に売り抜ければ、来年以降の処分と比べて数百万円もの節税を達成できるケースもある。

 まず、取得価格がわかっている人の場合は、節税額を簡単に計算できる。下記の例では、仮に同じ株価で売却できたとしても、年内と来年では約450万円の違いが生じた。この先も保有し続ける意向だったとしても、いったん節税売りを行なったうえで買い直すのが賢明だろう。

 さらにやっかいなのは、「いくらで取得したのか不明」というケースだ。その場合、税制上では「譲渡価額(売却価格)×5%」が取得価格とみなされる。現実にはもっと高値で取得したものでも、大幅な利益が出ているように税額が計算されるのだ。しかも来年以降は税率が倍増するのだから年内売りはマストだ。