間近に迫った安倍首相による「消費税UPの決断」。もはや後戻りができないところまで、消費増税の道筋ができてしまっている。消費増税に向けた経済対策に盛り込むものとして、復興特別法人税の前倒し廃止も報道された。対策案では1年前倒しにし、今年度末で廃止。これにより約9000億円の財源が失われることになるが、この分を補正予算で一般会計から復興特別会計に振り替えて、復興予算を維持するという。財源を消費税に頼らず確保する方策があるにも関わらず、消費税増税ありきで進んでいる今、政府が本当になすべきことは何なのか。ZAi編集部は『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界一わかりやすいニッポンの論点10』の著者であり、アベノミクスブレーンの高橋洋一さんに、消費増税後の政府の対応についてインタビューした。
●第1回 消費税増税は決断されるのか? 高橋洋一氏に聞いた3つのシナリオと今後の展開
●第2回 消費税を増税しなければ日本は破たんするのか!?
先進国の中でも飛び抜けた金融資産を持つ日本
――先生のこれまでのお話を聞いていると、消費増税の理由となっている「このままでは日本は財政破綻する」という前提が少し疑問に思えてきましたが。
デフレ脱却、景気対策、経済対策といった耳障りのいい言葉を隠れ蓑に、消費税増税が決定しそうな流れだが、そもそも日本はそこまで財政がひっ迫しているのか。国の財務諸表であるバランスシートをよく見てもらいたい。これをはじめて作成したのは、実は私だ。しかし国の借金が多く、財政再建が重要であると主張し続けている財務省にとって、バランスシートによって国の資産総額が明らかになるのは具合が悪かったのだろう。実際に政府が公表するまでに10年はかかった。
2012年3月末時点のバランスシートでは、負債総額1088兆円に対し、資産総額は629兆円。IMF(国際通貨基金)などの国際機関では国の負債は資産を差し引いて見るのが普通だ、それでいくと、その時点での日本の債務は459兆円ということ。これは先進国においては、それほど問題視する額ではないのだ。
さらに言えば、日本の資産629兆円のうち、428兆円が金融資産で、内訳としては現預金が18兆円、有価証券が98兆円。貸付金143兆円、運用委託金111兆円、出資金59兆円となっている。このうち運用委託金は年金資産だから動かせないとしても、貸付金、出資金はいわゆる特殊法人への資金提供だ。天下りの温床と問題になっているにも関わらず、ここにも手つかずの資金が眠っているのだ。これほどの金融資産は先進国の中でも飛びぬけている