かつて殺人都市として知られたシウダード・フアレスは、最近殺人件数が40%減っている。世界でもっとも危険な都市だと言われていた頃、モルグに遺体を収容する余地がなく、大型冷凍庫の中には遺体が常に満杯状態で、検死官は一日中解剖に忙殺され、遺族は外で列をつくって待っていたという。

 2012年1月から9月の殺人は681件で、決して低い数字ではないが、2011年の同じ時期の1571件に比べるとかなりダウンした。テキサスのエルパソ大学政治学教授のキャスリーン・シュタウトは、フアレスカルテルと、メキシコ国境を牛耳っていたホアキン・“エル・チャポ”グズマン率いるシナロアカルテルとの麻薬抗争が終わったため、事態が改善されたと見る。

 去年1年で、殺人件数が劇的に減ったのは、主要な麻薬カルテルが縄張りと独占権を手放したためだろうが、この町の状況は依然として厳しいものだ。こうしたギャングのリーダーはまだ捕まっていないし、麻薬を巡るまた別の抗争が起こる可能性はある。カルデロン大統領は、メキシコの殺人件数は減りつつあると言っているが、政府は全国規模のデータを発表するのを拒んでいるため、依然として釈然としない。