願主(伊都内親王)の思いと目的
この箇所は『伊都内親王願文』の序盤にあたり、内親王(あるいはその血統・皇室)の徳の高さや、父母への深い敬慕、そして仏法にすがる心情が描かれています
## 釈文(文字の読み)
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### 【右ページ】
1. **之前之姓資天人以廣**
2. **氣熏江漢之英靈凝**
3. **卑深測風神肅然後**
4. **四德生知以行成就昌**
### 【左ページ】
5. **城之藥妄波千靈函**
6. **演金剛空知三身興**
7. **以平子莫日月之不面**
8. **想顔色之途遙速始典**
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## 書き下し文
> **【右ページ】**
> この前の姓は天人を資(たす)けて以て廣(ひろ)く、気は江漢の英に薫(くん)じて霊(れい)凝(こご)り、卑深(ひしん)に風神を測りて粛然(しゅくぜん)たり。然(しか)して後に四徳は生知(せいち)して以て行(おこない)成就し昌(さか)んなり。
> **【左ページ】**
> 城の薬は妄(みだ)りに千霊の函(かん)に波(なみだ)ち、金剛を演じて空しく三身の興(おこ)りを知る。平子(へいし)を以て日月(じつげつ)の面(あいまみ)えざるを莫(うれ)い、顔色(がんしょく)を想うの途(みち)遥かなるに速やかに典を始めん……
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## 現代語訳(詳細解説)
* **【右ページ:生まれもった優れた徳と気品】**
その優れた生まれと血統は、天人にも通じるほど広大であり、長江や漢水といった大河の豊かな気(英霊)が凝縮したかのような気品を備えておられます。謙虚でありながら深遠な気風と精神をお持ちで、その佇まいは実に謹厳です。生まれながらにして四徳(高い徳行)を悟り知っており、その善行はことごとく成就し、栄えておられます。
* **【左ページ:親を失った悲しみと、供養への志】**
(いくら優れた薬であっても)命の儚さには勝てず、深い悲しみの涙が霊前に溢れます。仏が説く普遍の真理(金剛)を説き、三身(仏の尊いお姿)の本質を深く悟るに至りました。
私(平子内親王)は、もはや父母という太陽や月のような存在に二度とお会いできないことを悲しみ悼み、そのお顔やお姿を偲ぶ思いは遙かに募るばかりです。そこで、速やかにこの(供養の)典礼を執り行おうとするのです……
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### 💡 この箇所の見どころ(書法・文脈)
* **「平子」の文字:** 左ページ3行目にある「平子」は、願主である伊都内親王の本名(平子内親王)を指しています。
* **書道の美:** 「江漢」「風神」「金剛」「日月」などに見られる、橘逸勢特有の伸びやかで勢いのある筆致(行草書)が非常に際立っている見ごたえのある紙面です。