伊都内親王願文 現代語訳

伊都内親王願文 現代語訳

1. 序文・仏教の教えと功徳
【現代語訳】
謹んで考えますに、釈迦如来がこの世界にお現れになったのは、深い慈悲をもって迷える衆生を救うためであり、仏の真理(教え)が世に広まったのは、生きとし生けるものを悟りの岸へと導くためです。

それゆえ、仏法に帰依して功徳を積む者は、必ずやその善い報いを受け、真心を込めて祈りを捧げる者は、かならずやその願いが叶うのです。

2. 願主(伊都内親王)の思いと目的
【現代語訳】
願主である私(伊都内親王)は、伏して思いを巡らせますに、先祖代々の恩徳は深く、皇室の栄華は限りなく続いております。

ここに、亡き御霊(母・藤原乙牟漏をはじめとする先祖)の追善供養のために、また現世のおだやかな安寧と、未来永劫にわたる福徳を祈念いたしまして、心を込めて仏像を奉納し、一切経(仏教経典のすべて)を書写・供養いたすものであります。

3. 具体的なお供えと供養の内容
【現代語訳】
私が精魂を込めて造立いたしました仏像ならびに整備いたしました一切経、そしてこれらを安置・維持するための寺領(土地や財産)を、謹んで寺(山階寺/興福寺)に寄進いたします。

これにより、仏法がますます興隆し、聖なる教えの光が途絶えることなく照らし続けることを切に望むものであります。

4. 祈願の言葉(結び)
【現代語訳】
伏して願わくは、この小さな善行の功徳が広く行き渡り、亡き御霊が速やかに苦しみの世界を離れて悟りの境界(極楽浄土)へと導かれますように。

また、現世に生きるすべての衆生が、ともに仏の慈悲に浴し、永く平穏と幸福を得られますように。

承和元年(834年)九月十三日