筋膜リリースの医学的根拠と研究結果
現在の研究では、筋膜リリースは特に以下の効果について有効性が示唆されています。

1. 疼痛の軽減(特に筋筋膜性疼痛)
複数のシステマティックレビュー(複数の研究を統合・分析したもの)により、筋膜リリースは筋筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome: MPS)や慢性腰痛(Chronic Low Back Pain: CLBP)の疼痛レベルの軽減に有効であることが示されています。

根拠の例: 慢性腰痛患者を対象とした研究のレビューでは、筋膜リリースが痛みの軽減と生活の質の向上に大きな改善効果をもたらすことが示されています。

2. 可動域(ROM)と機能の改善
筋膜リリースによって、関節の可動域が改善し、それに伴う身体機能の向上が見られるという報告が多数あります。これは、硬くなった筋膜の緊張を緩め、筋肉の滑走性(滑りの良さ)を回復させる効果によるものと考えられています。

根拠の例: 胸腰筋膜を含む腰背部の自己筋膜リリースに関する研究では、介入後に柔軟性、体幹筋力、筋筋膜の滑走性に有意な改善が認められています。

3. 作用機序の解明
筋膜リリースは、単に物理的に筋膜の癒着を剥がすだけでなく、筋膜に存在する感覚受容器(メカノレセプター)への刺激を通じて、自律神経系に作用し、痛みの感覚を抑制したり、全身の緊張(交感神経の興奮)を緩和したりする神経学的な効果も重要な作用機序であると指摘されています。