わたしはフランスその他の料理にあまり多くのものを期待してはいない。"欧米諸国の料理に失望す"というようなことになるであろう。まずい魚介、まずい肉、まずい蔬菜といった材料ではなにができるものでなし、心に楽しむ料理など、もとよりでき得るものではない。しかし、なんとかものにしようと苦心し、工夫しているのが、ヨーロッパや中国の名料理であるようだ。そこには無理がともない、愚劣が生じ、人意の単調もうかがわれて怪しいものである。かりに口になじむとしても、目に訴えて、心を喜びに導くような美しさは望むべくもないようだ。

出典 昭和29年の欧米旅行に際して。『欧米料理と日本』