私は多年ラジオ料理にも注意深く耳を傾けつづけて来たが、その講師は男女ともに傾聴に価する講者を発見したことはない。いかなる家庭に育った人たちか、どんな料理経歴をもつ人々なるか、いずれもが低調な料理職人から学んだであろうことが、ほぼ察し得られるゆえに、生きた資材も、いらざる手間のために、味を損ね、料理学上無知の譏(そし)りを免れず、まことに噴飯に堪えないのが実情である。

出典 『味を知るもの鮮し』