いつの間にか他の皆も起き出しており、背後で息を殺していた。

影がいなくなった時、
テントの中では安堵の溜め息が重なったそうだ。

その直後慌てて外に飛び出し、
憑かれたように火を見つめる友人を引っ掴んで、
ひどく揺すって目を覚まさせたのだと、そう言われた。

思わず、影が消え去った方角の闇をじっと見つめてしまった。

何も動く気配はない。足元で薪の爆ぜる音が聞こえるだけだった。

その後彼らは、その山を下りるまで絶対に火を絶やさないよう心掛けた。

不寝番を二人立てて、火の番を交代でしたのだという。

その甲斐あってかその後、あの黒い影はもう現れなかったそうだ。

「僕はあの時、何と会話していたのかな?」

思い出すと今でも鳥肌が立つのだそうだ。