俺たちが行くと、Tさんはよほど一人が心細かったのか、
わざわざ外まで出迎えてくれた。

けど俺は寮を見た時から、なんとなくイヤな感覚に襲われていた。

夜中にパトカーの回転灯が集まっている場所を見るような、いやな感じだ。

…ふと、窓の1つに目をやると、閉じたカーテンが不自然にめくれ上がり、
そこから妙に小さな顔っぽいのが、こっちを見ている気がした。

俺にはそれが、『近づくな』の警告だと思えた。

でも、極力明るく振舞うTさんに気を使って、言えずに見られるがまま。

俺「えー…と、どうだ、Z。何か感じないか?」

Z「ん…いや、特に無いな。まあ上がらせて貰おうか」

T「おう、酒も用意しといたぜ。さ、さ、入れよ、な?」

ハッキリ言って俺は、今日はやめておこう気分になっていたが、
下戸のTさんに酒を用意されては退路が失われた。