今度は前を向いているようですが、吹雪のせいで良く見えません。
Aは気付いていないのか、じっと立っていました。
「おーい!」
俺が声をかけてもAは動こうとしません。
すると、女のほうが動くのが見えました。
慌てて望遠鏡をそっちに向けてビビリながら覗くと、
女は目を閉じてAの後ろ髪を掴み、後ろから耳元に口を寄せていました。
何事か囁いているような感じです。
Aは逃げようともしないで、じっと俯いていました。
女はそんなAに囁き続けています。
俺は恐ろしくなって、ガクガク震えながらその場に立ち尽くしていました。