まずは、この文章から目を離し、あなたのまわりをゆっくりと眺めていただきましょう。

何が見えますか? リビングの壁、学校の教室、お昼休みのオフィス、通勤・通学電車やその窓からの景色……。

ここでは、あなたは自分の部屋にいると仮定して、話を進めましょう。

あなたにとってはすっかりおなじみの部屋。壁の色は……ベージュですか? 窓から何が見えますか?

きれいな緑の山、地平線まで続く住宅の屋根、それとも、高層ビルの明かり。

さて、本題に入りましょう。あなたの見ている部屋の壁の色は、あなただけのものです。

つまり、あなたが見ているベージュの壁は、ほかの人が見たとすれば、あなたの感じているベージュとは違う色を感じているはずです。

色に対して敏感な人は、濃いベージュに映るかもしれません。そうでもない人は淡いベージュに見えるはずです。

窓の景色も、視力が高い人は遠くまではっきりと見えて、視力の低い人はぼんやりと、また違う景色に見える。

人は、同じものを見たとしても、 一人一人、見え方は違うのです。「あたりまえじゃないか」と思われる人もいるかもしれません。

でも、同じものを見て、 一人一人の見え方が違うということは、「見る」という行為・体験は、極めて個人的なこと、主観的なことということです。

「視力」という言葉になった途端、急に科学的で客観的な雰囲気になってしまいます。

まして、1、5とか0、3とか、数字で視力を表現すると、主観の入り込む余地はないという感じになってしまいます。

しかし、すでにあなたが、この本の最初の部分で実感してもらえたように、見るということは極めて個人的な行為であり、主観的なものなのです。

ということは、 一見、客観的に思える視力も、実は主観的な数字なのです。ここのところはとても大切です。

″見ることや視力は、主観的なこと″

これが、科学的に視カアップを行う上でのスタート地点です。