「口臭を消すのに,なにか特別によい歯みがき剤はありませんか?」こんな質問を受けることがしばしばあります。

市販の歯みがき剤の箱には,「歯を自く」「口臭予防」「歯垢を分解」「歯槽膿漏予防」など,いろいろなキャッチフレーズが書かれています。

そんななかで,「味がよく,気分よく歯みがきができるものであれば,どれでも結構」というのが答えです。

歯のエナメル質は,鉱物を順に傷つけて硬度を序列するモースの硬度計で6~7度,正長石~石英と同じ硬度があります。

また,歯根部は4~5度で,ホタル石~リン灰石の硬度があります。手近なものの硬度をあげると,ツメ2.5度,銅板3度,鉄クギ4.5度,ガラス5.5度,ナイフ6~6.5度です。

さて,歯みがき剤には,基材として炭酸カルシウム, リン酸カルシウム,炭酸マグネシウムなどが用いられています。

これらは歯の機械的な清掃に役立つものですが,いわゆる研磨材としては,粒子の大きさが1-20ミクロン,かたさはモース3度以下,形はとがっていないことが条件づけられています。

ですから,歯みがき剤をつかうと歯がすりへる恐れは無用なことです。ちなみに,歯根部が露出してしまう歯槽膿漏用の歯みがき剤は,研磨力が低くつくられています。