竜巻(たつまき、tornado)は、積乱雲の下で地上から雲へと細長く延びる高速な渦巻き状の上昇気流。
突風の一種で、規模が小さく寿命が短い割に、猛烈な風を伴うのが特徴。地上で強い竜巻が発生すると、暴風によって森林や建物などに甚大な被害をもたらすことがあり、災害をもたらす典型的な気象現象の一つとされている。
竜巻の水平規模は平均で直径数十m、大規模なものでは直径数百mから1km以上に及ぶ。その中心部では猛烈な風が吹き、ときには鉄筋コンクリートや鉄骨の建物をも一瞬で崩壊させ、大型の自動車なども空中に巻き上げてしまうことがある。1ヶ所に停滞するものもあるが、多くは積乱雲と共に移動する。その移動速度は様々で、まれに時速100kmを超えることもある。
竜巻は、雲底からゾウの鼻状に垂れ下がる漏斗雲を伴うことが知られている。これは竜巻に巻き込まれた空気中の水蒸気が急激な気圧低下により凝結して生じる。従って、空気が乾燥していたり竜巻が弱い場合は漏斗雲を伴わないことも珍しくないうえ、夜間や豪雨中に発生した場合は漏斗雲を確認できないことも多い。
ちなみに、竜巻の渦は大抵の場合、地上にある渦が上昇気流に引き伸ばされて、上空に延長することでできる。逆に、上空から発達して、下降気流によって地上に引きずりおろされる場合もあるが、稀である。
これに対して、竜巻の雲(漏斗雲)は大抵の場合、親雲の下端である数百mの上空からでき始めて、次第に地上付近まで延びる。この違いは、竜巻の渦が、気圧傾度力が大きい地上付近から発達するのに対し、漏斗雲は、気圧が低くなることで膨張・冷却されて凝結して形成されるため、より湿度が高く気温が低い上空から下のほうへと発達していくことが原因だと説明されている。しかし、仮説の域にとどまっており実態は解明されていない。
竜巻対策は即時性が求められるため、専門家のアドバイスや公的機関による情報提供だけではなく、竜巻の通過直前に見られる現象から危険を察知し、避難を行うことも重要だとされている。
まず、日中の目視可能な時間帯であれば、真っ黒な雲や暗緑色に近い雲が現れる、低く垂れ下がった雲や壁のような雲など不気味な形の雲が上空低い所に現れる、空が急に暗くなる、などの予兆がみられることがある。また、風が急に強くなる、風向が急に変わる、雹が降る、木の葉・枝・建物の残骸・土・砂といった飛散物が上空を飛んでいたり自分の周りに降ってくる、といった予兆もある。
竜巻の接近によって気圧が急降下・急上昇すると、キーンという音や耳鳴りといった耳の異常を感じることがあるほか、激しい気流の渦に伴う轟音、飛散物の衝突に伴う衝撃音などもある。
雷も、竜巻の発生しやすい気象条件であることを示しているが、頻度からすれば関連性はあまり強くない。
猛烈な風は、窓ガラスを割り、板やコンクリートなどの建材を崩し、木の枝を折った上、これらを猛スピードで飛散させる。また、勢力の強い竜巻は、大木を根元から吹き飛ばし、数百kg以上の車や構造物をひっくり返したりすることもある。これらの飛散物が、屋外のあらゆる物体や人に衝突して被害を発生させる。
屋内の場合、開いている窓は閉めてカーテンを閉め、窓から離れ、シャッターやドアを閉めるなどした上で、建物の地下や1階に移動し、壊れやすい部屋の隅から離れてできるだけ家の中心に近いところで、机などの下に身を潜めて頭を保護するのが適切な避難方法である。
屋外の場合、周りの飛散物に注意し、壊れて飛散しやすい車庫・物置やプレハブの建物、橋の周囲は避け、鉄筋コンクリート等の頑丈な建物の中に避難するか、体が収まるような水路やくぼみに隠れて頭を保護するのが適切な避難方法である。風の影響を受けにくく窓がないことから、地下室が最も安全な避難場所とされている。
竜巻の常襲地域であるアメリカ中部・東部では、各家庭や公共の建物に地下室や竜巻避難用として堅固に作られた地下シェルターが普及していて、竜巻警報が出たら地下室に避難するという対応が市民に広く周知されている。日本ではこのような地下室はほとんど普及していない。
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