書道人向け☆書いてある内容まとめ「藤原佐理/詩懐紙」

藤原佐理が26歳の時に書いた、日本国内に現存する最古の詩懐紙(国宝)です。

FC2USER657145FWO さん

1 PV

【題・署名】(右側)

原文(釈文):
暮春同賦隔水花光合
應教一首 (絶句爲躰 倭漢任意)
右近権少將佐理

読みくだし:
暮春(ぼしゅん)、同じく「水を隔てて花光(かこう)合う」を賦す。
教に応ずる一首。(絶句を体と為す 倭漢任意)
右近権少将(うこんのごんのしょうしょう)佐理。

1. 暮春(ぼしゅん)、同じく「水を隔てて花光(かこう)合う」を賦す。
現代語訳:
「春の終わり(晩春)に、一同で同じく『水を挟んだ向こう岸の花の輝きと、こちらの花の輝きが調和し合っている』というお題で詩を作りました。」

解説:

暮春(ぼしゅん): 陰暦3月、春の終わりの時期のことです。

同賦(どうふ): その場の出席者が共通のテーマ(お題)で詩歌を詠むことです。

隔水花光合(水を隔てて花光合う): 詩の題(課題)です。川や池などの水面を挟んで、あちら側の花とこちら側の花の美しさが照らし合っている情景を意味します。

2. 教に応ずる一首。(絶句を体と為す 倭漢任意)
現代語訳:
「(身分の高いお方からの)お言せ(命令・ご要請)にお応えして作らせていただいた一首です。(詩の形式は四行からなる『絶句』とし、和歌か漢詩のどちらで書いても自由、とされていました。)」

解説:

教に応ずる(きょうにおうずる): 天皇や皇族、あるいは上司などの命(お言せ)を受けて詩歌を詠む際につける謙遜と敬意を含んだ定型句です。

一首(いっしゅ): 本来は和歌を数える単位ですが、ここでは作品ひとつを指しています。

絶句を体と為す(ぜっくをたいとなす): 漢詩を作る場合は「絶句(4行構成の詩)」の形式にすること、というルールです。

倭漢任意(わかんにんい): 「倭(和歌)」でも「漢(漢詩)」でも、どちらの形式で書いても良い(自由)というルールです。佐理はここで漢詩(七言絶句)を選んで書きました。

3. 右近権少将(うこんのごんのしょうしょう)佐理。
現代語訳:
「右近衛権少将(という官職にある)藤原佐理」

解説:

右近権少将: 天皇を護衛する府官である「右近衛府(うこねふ)」の少将(補佐役の将官)という佐理の当時の役職名です。

佐理: 作者の名前です。

全体のまとめ
まとめますと、「春の終わりに開催された歌会(詩会)にて、高貴な方の仰せに従い、『水面を挟んで映える花々の光』というお題で、右近権少将の藤原佐理が詠んだ作品である」という書き出し・署名にあたります。

【本文・漢詩】(中央〜左側)

原文(釈文):
花脣不語偸思得
隔水紅櫻光暗親
兩岸芳菲浮浪上
流鶯盡日報殘春

読みくだし:
花唇(かしん)は語らず 偸(ひそ)かに思いを得
水を隔つる紅桜(こうおう) 光暗(ひそ)かに親しむ
両岸の芳菲(ほうひ) 浪上に浮かび
流鶯(りゅうおう) 尽日(じんじつ) 残春(ざんしゅん)を報ず

現代語訳
花びらは何も語りませんが、心の中で静かに思いを深めているようです。

川を隔てて咲く紅い桜は、春の光の中で密やかに引き合っています。

両岸からこぼれ落ちた草花の香りは波の上に浮いて流れていき、

飛び交うウグイスは、一日中ゆく春の終わりを告げています。

  • 1