実際の生体内で起こっている腰痛はMRIで覗いてみてもわかりません。MRIでわかるのはどの筋肉、靭帯、骨が正常とは異なる形をしていて神経を圧迫している可能性があるか、ということであり、あくまで形態検査です。そこから患者さまの今の痛みがでているかもしれない、という仮説をたてているだけで、今の痛みの原因であると証明しているわけではないのです。たとえば人体をくまなく探せば中年期以上の人ではだれでも骨の角が出っ張っていたり、軟骨がすり減っていたり、靭帯がゆるんでいたりする部分を発見できます。しかしそこから痛みがでることはほとんどなく日常生活を無事に過ごしています。たまたま痛い部位があって、たまたまMRIで故障個所とおもわれる部分がそこにあったとします。そこを手術しても、それでもよくならないという訴えが多いのは患者さまの訴えることとMRIの異常とが一致しないためです。

つまり痛みはMRIに写らないのです。これがMRIで腰痛を診断できない最大の理由です。