パルプ雑誌の作家であるハワード・フィリップス・ラヴクラフトと、友人である作家クラーク・アシュトン・スミス、ロバート・ブロック、R・E・ハワード、オーガスト・ダーレス等の間で、架空の神々や地名や書物等の固有の名称の貸し借りによって作り上げられた。

太古に地球を支配していたが現在は地上から姿を消している、強大な力を持つ恐るべき異形のものども(旧支配者)が現代に蘇るというモチーフを主体とする。中でも、旧支配者の一柱であり、彼らの司祭役を務めているともされる、太平洋の底で眠っているという、タコやイカに似た頭部を持つ軟体動物を巨人にしたようなクトゥルフは有名である。

邪神の名前である「Cthulhu」は、本来人間には発音不能な音を表記したものであり、クトゥルフやクトゥルーなどはあくまで便宜上の読みとされているため、クトゥルー神話、ク・リトル・リトル神話、クルウルウ神話とも呼ばれる。ラヴクラフトから彼の遺著管理者に指名されたロバート・バーロウによると、ラヴクラフト自身はKoot-u-lewと発音していたそうである。またラヴクラフトの書簡には、発音方法が記されたものがある。それによると『Cluh-luhのように音節を分け、舌の先を口蓋にしっかりとつけたまま、唸るように吠えるように、あるいは咳をするようにその音節を出せばいい[2]』と書かれている。1974年出版のラヴクラフト全集を訳した大西尹明はクトゥルフと表記した理由を「発音されると考えられる許容範囲内で、その最も不自然かつ詰屈たる発音を選んだがため」としている。なお、ラヴクラフトの作品中で明確に「人間には発音不可能」とされているのは、「Cthulhu」と「R'lyeh」のみである。

この神話体系で用いられた固有の名称は、後の作家たちにも引き継がれているが、名称に伴う設定については各作家の自主性に任され、たとえばコリン・ウィルソンの『精神寄生体』や『賢者の石』では、本神話大系の名称にも使用されている邪神クトゥルー自体はあくまでもラヴクラフトの創作上の存在とされており、この辺りが世界観の共有を必要とするシェアード・ワールドとは異なっている。

ラヴクラフトは自身の作品群や世界観について、1928年に「アーカム・サイクル(アーカム物語群)」と呼んだ後、1930年頃に「クトゥルフその他の神話(Cthulhu & other myth)……戯れに地球上の生物を創造したネクロノミコン中の宇宙的存在にまつわる神話」と書いている。

「クトゥルフ神話」という語は長らくダーレスの考案とされてきた。そのため、「クトゥルフ神話」はダーレスが独自の見解を加え体系化した後の呼称として、ラヴクラフトの作品群やその世界観を指す「原神話」や「ラヴクラフト神話(Lovecraft Mythos)」と区別する意味で、「ダーレス神話(Derleth Mythos)」と呼ばれることもあった。特にダーレスによって持ち込まれたとされている、「旧神」「旧支配者」という善悪二元論的な対立関係に否定的な立場の読者はこの両者を明確に区別しているが、近年、ラヴクラフトがダーレスの「旧神」設定を自作に取り込んだ形跡が指摘されてもいる。