研究者らがこのほど発見した新種のボツリヌス毒素が、どうやら史上最強の致死性物質であるらしいことが判明。まだ抗毒素が見つかっていないためセキュリティ上の懸念から、具体的な遺伝子配列を記した論文は発表を当面差し控えるという学会始まって以来の異常事態となっています。

史上最悪って、具体的にどの程度の致死性なのか?…ですが、これが半端ないのです。


・2ナノグラム(10億分の2グラム)*注入しただけで成人を死に至らしめる。
・13ナノグラム(10億分の13グラム)*吸入しただけで成人を死に至らしめる。
・スプーン1杯ぶん混ぜただけで全市の水供給が壊滅的打撃。




ひ~。この猛毒の出元はボツリヌス菌(Clostridium botulinum)という細菌です。毒が体に回ると神経系統を動かす神経伝達物質の分泌が遮断され、ボツリヌス中毒症および麻痺による死亡を引き起こしてしまうのです。

この新種のボツリヌストキシン*に関する最近の記事に付属のコメントで、スタンフォード医学大学院のデビッド・レルマン(David Relman)教授は「この物質は瞬時に甚大なリスクを社会に及ぼすものだ」と話しています。

「そんなに危ないもの、そもそもなぜ持ってんの?」って、誰でも不思議に思いますよね。でもこれ、人が人為的に作ったものではないらしいのです。化学兵器つくってたらこんなのできてアラ大変とか、そういうのとは違うようです。

ボツリヌス菌の系統樹には既に7つの枝があることが確認されていました。今回研究者たちがボツリヌス中毒症の乳児の糞便検体から発見したのは8つ目の枝。この8番目のタイプ(タイプHと呼ぶ)が世界で最も高い致死性の物質だったのです。

テロ悪用の懸念などもあることから、記事では遺伝子配列まで踏み込んだ発表はしていません。ボトックスは昔からテロリストにはよく使われてますものね。1990年代オウム真理教が東京都心でばら撒こうとした化学・生物兵器の中にもボツリヌス毒素ありましたし。

とりあえず今は機密扱いで安泰ですが、科学的な発見が軍事利用されることはよくあること…取扱い要注意ですね。

[New Scientist]
Image via Shutterstock / Jezper

ADAM CLARK ESTES(原文/satomi)