2015年春の株式上場を目指す日本郵政(JP)が、金融子会社であるゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の傘下2社も同時に上場させる計画を進めていることが明らかになった。
親子で上場する異例の形態でグループの一体性を維持し、収益力のある金融2社からの配当収入を確保するのが目的だ。困難との見方が多かった金融2社も上場させることで「民営化に逆行している」という批判を避ける狙いもありそうだ。
■金融2社の株式売却は「努力目標」だった
関係者によると、3社の同時上場案は2013年6月に日本郵政社長に就任した西室泰三・前郵政民営化委員長が発案し、関係省庁や東京証券取引所などと調整を進めている。郵政を所管する総務相経験者でもある菅義偉内閣官房長官もこの案を後押ししているという。
12年4月に成立した改正郵政民営化法では、金融2社の株式の売却については期限をもうけない「努力目標」に格下げされた。特定郵便局長会やJP労組などの組織が、収益力のある金融2社を切り離せば全国の郵便局網と職員などの組織を守り、全国どこにでも同じ料金で郵便物を届ける「ユニバーサルサービス」を維持できなくなると強硬に反対していることに配慮したためだ。市場関係者の間では改正法について「民営化路線の後退」との受け止め方が多く、金融2社の株式上場は当面困難とみられていた。
しかし、西室社長らは安定政権が数年は続くとみられる今の機会を逃せば民営化路線がさらに後退するのは避けられないと判断。2社の早期上場に道筋をつける一方で、政府系の企業としては異例の形態である「親子上場」によって、金融2社の収益を株式配当で吸い上げる仕組みを構築し、旧郵政系議員との妥協を図る戦略に舵を切ったとみられる。
■財務省や金融庁には反対論も
金融2社については、米国政府も環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉の日米事前協議で、「暗黙の政府保証があり、公平な競争環境が確保されない」との懸念を伝え、金融2社の業務拡大に反対している。
グループの持ち株会社である日本郵政と金融2社の同時上場にこぎつけても、日本郵政株の3分の1超を日本政府が保有する「特殊会社」という位置づけは変わらず、米政府の態度が軟化するかどうかは不透明だ。
一方、親子上場に対しては、親会社の意向で上場子会社の経営戦略が左右されれば、少数株主の利益を損なうとの批判もあり、財務省や金融庁には反対論もあるようだ。
ただ、日本郵政の2013年3月期の連結純資産は12兆4482億円。政府保有株の3分の2を売却した場合、約7兆円が国庫に入る計算で、東日本大震災からの復興の貴重な財源になる。かつてのNTTと並ぶ大型上場が成功するかどうか市場関係者の関心は高く、年末に向けて政府内調整も本格化する。