米大手銀行は11日のJPモルガン・チェース<JPM.N>を皮切りに第3・四半期決算を発表する。同期は米連邦準備理事会(FRB)の金融政策をめぐる不透明感から債券取引収入が低迷し、収益を圧迫した模様だ。
JPモルガンの1株当たり利益は、トムソン・ロイター・エステメーツがまとめたアナリスト予想平均が1.27ドルと、前年同期の1.40ドルを下回る見通し。
18日(訂正)に発表されるモルガン・スタンレー<MS.N>の1株当たり利益は予想平均が0.48ドルで、前年同期の0.55ドルの損失から黒字転換が見込まれている。
17日発表のゴールドマン・サックス<GS.N>は1株当たり利益の予想平均が2.61ドルで、前年同期の2.85ドルから減益となる見通しだ。
アナリストは、業界全体で債券取引収入が前年同期比20─30%減少したとして、ゴールドマンやモルガン・スタンレーの収益見通しを下方修正してきた。あるトレーダーによると、第3・四半期の業績低迷を受けて一段の人員削減を恐れる金融関係者も一部にいる。
第3・四半期は例年、銀行のトレーディングビジネスが軟調な時期だが、今年は特にFRBが市場の予想に反して資産買い入れプログラムの規模を維持したことがポジションンに悪影響を及ぼしたと見られている。
トレーダーやアナリストによると、FRBの決定を受けて投資家はポートフォリオの調整を中止したため、取引が減って銀行のトレーディングデスクの収入を圧迫した。
ゴールドマンの銀行アナリスト、リチャード・ラムスデン氏は「取引水準の低迷が問題の中心だ。取引水準は非常に低い」と述べた。
第3・四半期の業績低迷を示す兆候は既に見られる。
ドイツ銀行<DBKGn.DE>のアンシュ・ジェイン共同最高経営責任者(CEO)は先週、第3・四半期は出来高の減少により債券取引収入が「大幅に減少する」と警告。モルガン・スタンレーとバークレイズ<BARC.L>も最近、トレーディング収入が低調になるとの見通しを示した。
投資銀行部門にも明るさがほとんど見られない。
バーンスタインのアナリスト、ブラッド・ヒンツ氏によると、米銀全体で債券引受収入は前年同期比26%減少し、企業合併・買収(M&A)手数料は横ばいにとどまった見通しだ。
ヒンツ氏は、ベライゾン・コミュニケーションズ<VZ.N>が英ボーダフォン<VOD.L>との合弁会社の完全子会社化で合意して巨額の起債を実施したことと、9月の一連のM&Aは心強い動きとなったが、「第3・四半期の業績を支えるには力不足だろう」と述べた。
米銀のトレーディング部門は、12月の連邦公開市場委員会(FOMC)まで債券取引収入は上向かないと予想している。
ゴールドマンのラムスデン氏は「FRBのメッセージが変化し、人々は足をすくわれた。従って人々が新たな環境になじみ、今後の道筋を見通せるようになるまで、取引に影響が及び続けるだろう」と述べた。