ディズニーランド、美談に隠されたブラックな実態〜バイトを魔法にかけ無報酬で酷使?

ディズニーランド、美談に隠されたブラックな実態〜バイトを魔法にかけ無報酬で酷使?

夢の国を成り立たせている背景には夢では終わらない現実で成り立っていること。

企業の方針がアルバイターにも影響を及ぼすことは間違いないだろう。

Ss400RipJp さん

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若者のアルバイトふざけ写真問題

ピザ生地を顔に貼り付ける、ハンバーガーのバンズをベッド代わりにする、
商品のソーセージをくわえる……いま、アルバイトとして働く若者たちが、
ふざけ写真をSNS上に公開し、炎上する事件が多発している。

謝罪に追い込まれた企業は、ピザハット、ローソン、バーガーキング、ミニストップ、
ほっともっと、丸源ラーメンと後を絶たず、ステーキハウス・ブロンコビリーに
いたっては、事件が発生した店舗を閉店。写真をアップした元バイト従業員に
損害賠償請求することを検討する事態にまで発展している。

この騒動にネットやテレビも強く反応し、「あきれて、ものが言えない」
「こんな写真を流布して恥ずかしくないのか」「バイト教育が不徹底だ」などなど、
批判が続出。バイトの信用度はガタ落ち状態だ。

本当に彼らだけが悪いのだろうか?企業側はどうなのか

しかし、である。不安定雇用であるバイトに対して、正社員並みの愛社精神や
コンプライアンスという職業意識を求めるということ自体に、そもそも無理が
あるのではないか。コスト削減を進め、責任が伴う仕事も低賃金労働でまかなっている
企業側にも問題の背景はあるはずだ。

そんな図々しい企業体質の象徴のような本が、いま売れに売れている。
それが、シリーズ90万部を突破した、東京ディズニーリゾート(以下、ディズニー)
で数々の人材教育を手がけてきた福島文二郎氏による著書『9割がバイトでも最高の
スタッフに育つディズニーの教え方』(中経出版)。
タイトルが示す通り、あのディズニーのバイト教育にスポットを当てた一冊だ。

ディズニーランドでのバイトの実態

本書によれば、ディズニーに従事する運営会社・オリエンタルランドの正社員数は約2000人だが、対してバイトの人数は約1万8000人。

バイトは1年間で半分の約9000人が退職するのだという。

手間暇かけて育てたバイトがすぐに辞めることは、企業にとっても痛手のはずだが、ディズニーの場合は「1年に3回くらい3000人近くのアルバイトを採用しなくてはなりませんが、推定で5万人以上の応募者が集まります」と自慢げ。でも、単なる“安い賃金で使い捨て”とも読める

各アトラクション担当員の育成実態

例えばカヌー探検のキャストは、どれだけ河を速く回れるかを競う「カヌーレース」を行う

劇場型のアトラクションなら、いかに滑舌よく時間通りにナレーションできるかを競ったりと、“スモールステップ”なるステップアップにチャレンジするのだという。

この“スモールステップ”は「いずれも、トレーナーをはじめとするアルバイトのキャストたちによってつくられたもの」というのだが、これだけのシステムをつくってもバイトはやはり無報酬。

著者が実際に行ったという「キャストの意識改革」

その改革とは、「すべてのゲストにハピネスを提供する」というディズニーの“ミッション”

浸透させるべく、朝礼・終礼はもちろん、口癖のように正しいミッションを繰り返すこと。特に新しく入ってきたキャストには徹底的に教え込み、同じ考えを持ったキャストにしかトレーナーは任せなかったそう。

そうして「職場全体の意識をひとつに」することができた時のことを、著者は「人間って、変わるものなんだ」と実感した……と振り返る。

あたかも感動エピソードのように、しみじみ著者は述べているが、要は自分とは違う考えのキャストを他部署に追放したり、退職に追い込んだ、ということではないか。

ディズニーランドで働いている方々はもう夢の国の住人

ディズニーのミッションを叩き込まれたあるバイトの女子は、母親から「ミッキーは何人いるの?」と問われた際、「何言ってるの。ミッキーは1人に決まってるじゃないの」と答えたという。

小さい子どもに訊かれたのならわかるが、相手は母親である。たとえ中年の身内に対しても、夢を壊さない。このディズニーイズムはすばらしいが、それが生成される過程を知ってしまうと、げに恐ろしいエピソードとしか感じられなくなってしまう

夢の国の成り立ちには多くの方の努力の影

これらのエピソードは、いわばディズニーという“夢の国”だから成し得てしまう魔法なのだ。バイトたちは、ミッキーの笑顔にごまかされ、無報酬であることに疑問も持たず、客に夢を与えるという使命感に燃える──

これでは最上のブランドイメージにつけ込んだ“ブラック企業”とも思えてくる。
あのミッキーの薄気味悪い高笑いも、より邪悪に響いてくるようだ。

「ブラック企業は許せん!」という声が高まる一方で、この“ディズニー式バイト教育”がもてはやされている現状。しかしその実態は、ブラック企業よろしく、不安定労働者を安く使っているだけ。

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