自毛植毛は、後頭部や側頭部の髪を、髪を生み出す皮膚組織ごと採取し、薄毛が気になる箇所に植え替える術式です。
通常、AGAはテストステロンという男性ホルモンが5α還元酵素という酵素によって変換されたDHT(ジヒドロテストステロン)という物質によって引き起こされます。しかし、後頭部・側頭部の髪の毛はこのDHTの影響を受けにくいことが明らかになっています。
前頭部の薄毛がかなり進行したとしても、後頭部・側頭部の髪はもとのまま生え続けているのはこのためです。この後頭部・側頭部の元気な髪を毛包ごと薄くなった箇所に移植すると、移植された毛包はDHTの影響を受けにくいため、髪はもともとの性質のまま一生涯正常な成長サイクルを繰り返します。
これが自毛植毛のメカニズムです。「健康な髪が、そのまま別の場所で生え続けるだけ」という、実にシンプルな治療ですので、安全性も高く術後に特別なメンテナンスをする必要もありません。
増毛は、自分の髪の毛以外の毛を頭皮に植え付ける施術です。増毛には結毛式・接着式・編み込み式・着脱式などのタイプがあります。
どのタイプを選んでも、自分の髪だけでは足りない部分を補うことが目的で、見た目を良くすることができます。
自毛植毛の場合は、自分の頭皮の皮膚組織を薄毛のある部位に移植し、その後も髪の毛が新しく生える効果が期待できます。
増毛は、薄毛や抜け毛の部位に人工毛を装着する施術であるため、そこから新しく髪が生える効果を期待することはできません。
自毛植毛は、頭皮に植え付ける施術であることから、医療行為とみなされますが、増毛は医療の分野には相当しません。
自毛植毛は自分自身の細胞組織(男性ホルモンの影響を受けにくい後頭部の毛髪)を自分の薄毛の箇所(生え際や前頭部そして頭頂部)に移動する自家移植なので拒絶反応は起こらず、炎症も起こりにくいのが特徴です。
ご希望される薄毛の箇所の生え際や前頭部そして頭頂部に、ご自身の毛髪が自然に生え続け、かつメンテナンス不要な究極の薄毛治療です。
毛根が消失した部分にも移植が可能なケースがあります。例えば、繰り返し人工毛植毛をされた場合には、感染や炎症反応の結果、頭皮が硬く線維化(皮膚にコラーゲンなどの細胞外基質と呼ばれる物質が増加し皮膚が硬くなる)して血流が低下します。
そのような状態でも自毛植毛での移植の密度を抑えて低くすれば、人工毛植毛後の硬い皮膚でも毛根は定着します。
移植して生着した髪の毛は、自然に抜け落ちた後も再び新しい髪が生えてきます。
また、薄毛の影響を受けにくい後頭部(まれに側頭部)の髪の毛をドナーにして移植するため、治療後再び脱毛症になって抜け落ちる心配もありません。
生着した毛髪は元の毛髪と同じように扱えます。
そのため、パーマをかけたりヘアカラー・白髪染めを施したりするなど、ヘアスタイルを自由に楽しむことが可能です。
自毛植毛は日本皮膚学会が定めた「脱毛症治療の診療ガイドライン2017年版」でも2010年版に引き続き効果が認められました。AGA男性型脱毛症に対しては、フィナステリド及びデュタステリド内服やミノキシジル外用の次に「勧められる」施術法です。2015年には全世界で40万件にものぼる自毛植毛術が実施されています。しかし、人工毛植毛は日本皮膚学会から「勧められない」との厳しい判断が下されています。
拒絶反応とは、体が植毛した毛を異物と見なすことで、毛を攻撃してしまい炎症が起きてしまうことを言います。
人工毛を使った植毛の場合は、拒絶反応がとても起こりやすいことが特徴です。
人工毛はナイロンやポリエステルでできた作り物なので、体がどうしても異物と見なしてしまい、異物を追い出そうと拒絶反応を起こします。そのため植毛した部位が荒れたり、人工毛が抜けてしまったりすることがあるのです。
一方で自毛植毛の場合は、もともと生えていた自分の毛を移植するので、拒絶反応が起こりません。だから頭皮が荒れたり拒絶反応によって植毛した毛が抜けてしまったりするリスクが低いのです。
自毛植毛は、ケガや病気の治療とは違い、健康保険適用対象外となるため、費用が高くつくのが難点です。植毛の範囲が広くなるにつれて費用も高額になります。
自毛植毛は人工毛を使った増毛とは違い、施術を受けてからすぐに効果を実感できるというものではありません。
効果を実感できるまでには人それぞれ個人差はありますが、最長で1年近くはかかります
根気強く対処して長期的な経過観察が必要となりますので、良い結果が実感できるまでに気長に待つより他にありません。
施術の実績が少ない医師が担当した場合、仕上がりに満足できない結果になる可能性も考えられます。仕上がりの満足度の高さは、医師の腕によって決まるといっても過言ではありません。
自毛植毛の施術を受けた後、十分な効果が得られない可能性もあります。
施術を受ける前に、カウンセリング時に医師に生着率について尋ねておくと良いでしょう。
- 1
- 2