「ちょっと待ってくれ、本物の痴女だって? 痴女はAVが生み出したファンタジーというのが俺の信条だ。痴女なんてものはこの世に実在しないと思ってる。そんな俺にふさわしい仕事とは思えないがな」

「いや…」依頼人は、わかってるだろうとでも言うように片手をあげ俺を制した。

「キミは知ってるはずだ。痴女は実在する」
「電車の中でいきなり男の股間をまさぐる逆痴漢か?」
「Yahoo!知恵袋を信用するな。都市伝説の類いじゃない」
「DANDYのAVを見過ぎじゃ無いのか、アンタ」
「いや、痴女はいるのだ、すべての…」

依頼人はまるで寸止めするように間を置いた。

「すべての女性の心の中に」

俺は笑った。

「だったら、そこらへんを歩いてる女を勝手に痴女認定して連れてくればミッション完了ってことか。楽な仕事だ。請けるよ」
「私は『殿堂』をつくりたいと言っただろう? 痴女性はすべての女性の中に潜んでいるが、それを表現できる者は少ない。そしてその表現に魅力がなければならん。ファッションに似ているのだ。女性はみなオシャレをしたい。しかし、みながお洒落なわけではない。私が求めているのはファッションリーダーとなれる女性だ。痴女リーダーだ。女性が彼女のようになりたいと憧れるような。世界に痴女のすばらしさを伝導できるAV女優、それが私が求める本物の痴女なのだ」